3次元バーチャル空間におけるインフォーマルな会話の開始を促すためのゲイズキューの可視化手法 (002)
(1) 3次元バーチャル空間におけるインフォーマルな会話の開始を促すためのゲイズキューの可視化手法

インフォーマルな会話が始まる前の人々のインタラクションでは,ソーシャルキューの中でも特にゲイズキューが重要な役割を果たすとされる.本研究は,3次元バーチャル空間で,ゲイズキューの可視化がインフォーマルな会話の開始を促すかを調べるために,3つの可視化手法を設計,実装した.96人の参加者に,4つのゲイズキュー(矢印・流れるシャボン玉・ミニチュアのアバタでそれぞれ可視化されたゲイズキューとコントロール条件としての可視化されていないゲイズキュー)のいずれかを,2つのゲイズタイプ(一方がもう一方を見つめる一方向型と,2人が同じ対象を見つめる共同型)で使用してもらった.その結果,可視化された3つのゲイズキューは,可視化されないゲイズキューと比べて,一方向型と共同型いずれの場合も,インフォーマルな会話の開始を促すことに成功した.3つの可視化手法の中では,一方向型では,シャボン玉が最も有効で,ゲイズキューの受け手は,言語や非言語で送り手により反応した.本研究は,バーチャルタウン,バーチャル展示会などの多人数VRアプリケーションに応用できる.

井出 将弘(東京都市大/TIS),市野 順子(東京都市大),芳木 武仁(TIS),横山 ひとみ(岡山理科大),淺野 裕俊(工学院大),宮地 英生,岡部 大介(東京都市大)
ハイブリッド勤務における社会規範が職場のウェルビーイングに及ぼす影響 (008)
(2) ハイブリッド勤務における社会規範が職場のウェルビーイングに及ぼす影響

組織の社会規範が従業員のウェルビーイングに良い影響を及ぼすことが,先行研究で示唆されている.しかし,COVID-19以降のオフィス勤務とリモート勤務を組み合わせたハイブリッド勤務への移行期には,組織の社会規範が十分に確立されておらず,社会規範に対する従業員の認識が,従業員のウェルビーイングにどのような影響を及ぼすかは明らかにされていない.そこで本研究では,日本在住のハイブリッド勤務者を対象としたオンライン調査(n = 212)とインタビュー調査(n = 20)により,ハイブリッド勤務における社会規範が従業員のウェルビーイングに及ぼす影響を調査した.その結果,社会規範が強いと感じるハイブリッド勤務者のウェルビーイングは低いが,社会規範に従う意欲が高いハイブリッド勤務者のウェルビーイングは高いことが示された.これらの結果を踏まえ,本研究では,ハイブリッド勤務者が組織の社会規範に適合し,ウェルビーイングを高めるための職場の管理に対する示唆を議論する.

赤堀 渉,ジャック ジェーミソン,山下 直美(NTT),中谷 桃子(東京工業大学),橋本 遼,渡辺 昌洋(NTT)
ThermoTumbler: 下唇周辺への温度提示による飲料の食体験と味覚変化の実現 (026)
(3) ThermoTumbler: 下唇周辺への温度提示による飲料の食体験と味覚変化の実現

食事は人生最大の喜びや幸福感をもたらす楽しい体験であり,食事を楽しむことは幸せな人生を送ることに繋がる.一方で,食生活の改善は生活習慣病や肥満の一次予防と重症化予防につながると報告されている.多くの場合,塩分や糖分を控えた食事を摂取したり,好きな食品を我慢する必要がある.我々は,ユーザが知覚する基本五味のことを「味覚」,飲料の後味やのど越しのような,味覚以外の感覚を「食体験」として扱う.本研究では,特に飲料の摂取において,飲料を変化させることなく,下唇周辺への温度提示によって,「口中香」「後味」「味の濃さ」「のど越し」「おいしさ」「心地よさ」といった食体験や味覚に影響を与える方法として,ThermoTumblerを提案する.ThermoTumblerでは,下唇周辺への温度提示を実現するために,ペルチェ素子やヒートパイプ等を利用して飲み口の温度制御を実現した.ThermoTumblerを用いて,下唇周辺への温度提示による食体験や味覚の変化を調査した.評価実験の結果,提示温度に応じて実験参加者の感じる飲料の「温度」「のど越し」「おいしさ」「心地よさ」が変化することが明らかになった.

上堀 まい,伊藤 弘大,伊藤 雄一(青山学院大)
(4) 人と微生物の相互ケアを育むインタラクションNukabotの設計と評価を通して (特集号からの招待)

チェン ドミニク(早稲田大学),ソン ヨンア(法政大学),城 一裕(九大),小倉 ヒラク(Hakko Department),守屋 輝一,三谷 悠人,関谷 直任(フリーランス)
WESPER: 話者・言語非依存の実時間ささやき声通常音声変換によるスピーチインタラクション (003)
(5) WESPER: 話者・言語非依存の実時間ささやき声通常音声変換によるスピーチインタラクション

ささやき声の認識と通常音声への変換には音声インタラクションの多くの可能性がある.ささやき声の音圧は通常の音声よりもはるかに低いため,公共の場において他人に聞かれることなくサイレントスピーチに準ずる音声入力として利用でき,公共環境での遠隔会議も可能である.また,ささやき声やかすれ声を通常の発声に変換できれば,発声障害者や聴覚障害者の発声品質を向上させることができる.しかし,従来の音声変換技術では,ささやき声から通常声への変換には十分な変換品質が得られないか,ささやき声と通常音声のペアからなるデータセットが必要だった.本研究では,自己教師型学習に基づく実時間ささやき声音声変換機構,WESPERを提案する.WESPERは,ささやき声と通常音声の差分を吸収した潜在音声単位を生成する音声単位変換器(Speech to Unit encoder, STU)と,音声単位から目的の音声を復元する単位音声変換器(Unit to Speech decoder, UTS)から構成される.テキストの付随しないささやき声と通常音声のペアでない音声データのみから事前学習可能で,発話者・言語に依存しない変換を実現する.UTSは,ラベルのない対象話者の音声データのみから,対象話者の音声を復元するように学習可能である.本手法を実験参加者50名により評価し,ささやき声から変換された音声の品質が向上し,韻律の自然さも保持されることを確認した.また,提案手法が言語障害者や聴覚障害者の発声再構成にも有効であることも評価実験により確認した.

暦本 純一(東大/ソニーCSL)
視覚障害者がスキーシミュレータを用いるための聴覚フィードバックの検討 (006)
(6) 視覚障害者がスキーシミュレータを用いるための聴覚フィードバックの検討

視覚障害者スキーでは,視覚障害者を声で誘導する晴眼者が不可欠であるためトレーニングの機会は限られており,スキー技術向上が困難であった.そこで本研究では,視覚障害者単独でのスキーシミュレータを用いたスキートレーニングを可能とする聴覚フィードバックの検討を行う.パイロットスタディおよび実際のブラインドスキーヤとガイドへのヒアリングの結果から,次の3種類の音をデザインした:1)ターンに関する情報を伝達する単独音(ATS: Advance Turn Sound);2)ユーザの未来の位置と進行すべき位置の差に応じて出力される連続音(CES: Continuous Error Sound);3)仮想ゲレンデ上の旗門を通過したことを伝達する旗門通過音.ブラインドスキーヤおよび彼らのガイドを対象に評価実験を行ったところ,4名中3名のスキーヤにおいてATSおよび旗門通過音が出力される条件では,ガイドが掛け声で誘導を行う条件よりも,旗門通過数が増加し,仮想ガイドとの平均距離が減少することが確認された.

三浦 悠輔(早大),WU ERWIN(東工大),栗林 雅希(早大),小池 英樹(東工大),森島 繁生(早大)
ヒアラブルデバイスでの情報提示が特定周波数の主観的音量に与える影響調査とその回復手法の提案 (024)
(7) ヒアラブルデバイスでの情報提示が特定周波数の主観的音量に与える影響調査とその回復手法の提案

ヒアラブルデバイスの普及に伴い,ユーザの聴覚に常に情報が提示できる環境が整えられつつあるが,聴覚への常時情報提示はユーザの聴覚特性へ影響を与える可能性がある.例えば,ある周波数帯域の常時情報提示によって該当する周波数帯域の聴覚レベルの低下が生じるのであれば,自動車の接近音など人への危険を表わす環境音への反応が鈍り,思わぬ危険に繋がる可能性が考えられ,早急に聴覚レベルの低下より回復させる必要がある.そこで本研究では,ユーザのヒアラブルデバイスの常時装着を想定し,デバイスによる特定周波数の音の提示が,ユーザが知覚する環境音の音量(主観的音量)に与える影響と主観的音量の低下の回復に有効な刺激音の調査を行った.調査では,環境音聴取を模すためスピーカにて特定周波数の音を提示し,イヤホンからスピーカ音の周波数を基準とする特定周波数の刺激音を提示する.提示されたスピーカ音について定期的に感じた音量を数値化し,その変化より特定周波数の刺激音をイヤホンにて聴取することが主観的音量へ与える影響を調査した.検証の結果,イヤホンでの全ての刺激音聴取において,スピーカ音聴取における主観的音量は10.0%以上低下し,スピーカ音とイヤホン音の周波数が近似するほど低下量が大きくなる傾向がみられた.また,低下した主観的音量の回復に関して,特定の回復用刺激音の提示が有効であるという仮説をたて,主観的音量を低下させた後に,複数のエフェクトをかけた回復用刺激音を提示し,音の提示前後での主観的音量を比較することで回復に与える影響を調査した.検証の結果,特にホワイトノイズの特定周波数にバンドストップフィルタを適用し,フェードアウトエフェクトをかけた音の聴取が主観的音量の低下の回復に有効である可能性を確認した.

金本 颯太(神戸大),渡邉 拓貴(北大),寺田 努,塚本 昌彦(神戸大)
ダンスパフォーマンスにおけるあがりに弱い人を支援するための動作・生体情報分析 (009)
(8) ダンスパフォーマンスにおけるあがりに弱い人を支援するための動作・生体情報分析

本研究では,プレッシャーによって引き起こされる「あがり」に上手く対処できない人を対象としたあがり対処支援システムの構築を目指して,プレッシャーのかかる本番環境とプレッシャーのかからない練習環境におけるダンサーの動作・生体情報を分析する.分析を通してあがりを上手く対処できる人とそうでない人との違いを明らかにし,その違いを埋められるようなあがり対処支援手法について検討する.プレッシャーのかかる本番環境を構築するために,ダンスオーディションを企画し,その審査過程における参加者のさまざまな心身の状態を計測・分析する.調査の結果,あがりを上手く対処できない人はあがりを上手く対処できる人と比較して,練習環境における身体動作が有意に小さい傾向が認められた.

土田 修平,大西 鮎美(神戸大),向井 香瑛,渡辺 謙,渡邊 克巳(早大),寺田 努,塚本 昌彦(神戸大)
立体的プロジェクションマッピングとインタラクションによる遠方現実空間との接点が感じられるオンラインお絵描きコンテンツの開発 (029)
(9) 立体的プロジェクションマッピングとインタラクションによる遠方現実空間との接点が感じられるオンラインお絵描きコンテンツの開発

本研究ではオンラインユーザが手描きキャラクタを介して遠方の現実空間との接点を持つことができる新しいインタラクティブコンテンツの開発を行った.このコンテンツはWebページ上で描いたキャラクタが遠方の現実空間に投影される共創型プロジェクションマッピングであり,オンラインユーザは投影された映像をライブ配信で観察する.このとき,映像は立体的かつ現実空間の物体とのオクルージョンを正しく保って投影されるため,描いたキャラクタが遠方の現実空間に登場したように観察される.そして,オンラインユーザは身体動作やボタン操作によって遠方に投影された自分のキャラクタとのインタラクションが可能である.また,現実空間の人は投影されたキャラクタたちとのインタラクションも可能であり,オンラインユーザはその様子をライブ配信で観察することができる.実験では様々な場所から参加したユーザがコンテンツを楽しめる可能性があることを確認した.

安 素羅,水野 慎士(愛知工大)
速さと正確さへの主観的なバイアスがポインティング手法評価の一般化可能性に与える影響 (028)
(10) 速さと正確さへの主観的なバイアスがポインティング手法評価の一般化可能性に与える影響

新しいポインティング手法を評価する際,実験では通例「できるだけ速く正確に」タスクを行うよう教示する.本稿では複数のバイアスが,既存のポインティング手法であるBubble CursorとBayesian Touch Criterionの評価結果に与える影響を検証した.結果,前者は全バイアス条件でベースライン手法の性能を上回ったが,後者はより単純なターゲット予測手法の性能も下回り,元の論文とは異なる結果となった.このように複数のバイアスを調査することで,手法の特性をより正確に議論し,一般化可能性の高い結論を得ることができる.本稿では複数の主観的なバイアスを実験条件に加えることが望ましいと提言する.

木下 大樹,大塲 洋介,富張 瑠斗(明治大),山中 祥太(ヤフー),宮下 芳明(明治大)
サーフェスにおける引っ張り入力を実現するインタフェースの検討 (027)
(11) サーフェスにおける引っ張り入力を実現するインタフェースの検討

現在,多くの機器の入力インタフェースとして,タッチサーフェスが利用されている.タッチサーフェスの多くは,出力画面に触れることで入力ができるため,直感的な操作が可能であるという利点があるが,入力面の柔軟性は低く,入力可能な操作はタッチやスワイプなどの平面的なものに限られている.これに対し,HCIの分野では,入力可能なインタラクションを増やす研究が盛んである.しかし,これらの多くは,押し込み操作に限られていた.そこで,本研究では,既存の静電容量方式のタッチサーフェスに取り付けることで引張操作を可能とする,ゴムチューブインタフェースを提案する.本研究で提案するゴムチューブインタフェースは,ゴムの引張強度に応じて,内部の抵抗値が変化するため,タッチサーフェスの測定する流出電流値の変化を測定することで,引張の検知が可能となる.そして,実装したインタフェースを用いて,引張強度推定と,引張方向推定制度を評価した.その結果,実装したインタフェースにおいて,4段階の引張強度分類と,平均誤差4.73°での引っ張り方向推定が可能であることが示された.

前田 竜矢,伊藤 弘大(青山学院大),桑山 佳汰(阪大),藤田 和之(東北大),伊藤 雄一(青山学院大)
(企1) Yahoo! JAPAN研究所のトップカンファレンス採択論文 (口頭発表の企業講演)

Yahoo! JAPANのアカデミアにおける活動の中核を担っているYahoo! JAPAN研究所では,研究成果のアウトプットとしてトップカンファレンスへの投稿を奨励しています.この講演では,近年HCI分野の国際会議(ACM CHI、UIST、UbiComp、ISS、TEI等)に採択された論文を次々に紹介します.またヤフーではリクルートにも力を入れていますので,採用情報ページをぜひご覧ください(https://about.yahoo.co.jp/hr/).

山中 祥太,池松 香(ヤフー)
BO as Assistant: ベイズ最適化を活用した非同期的なデザイン案生成のためのフレームワーク (013)
(12) BO as Assistant: ベイズ最適化を活用した非同期的なデザイン案生成のためのフレームワーク

本稿では,デザイナが複数のパラメタ調整用スライダを試行錯誤しながら操作して望ましいデザインを得る過程(パラメトリックデザインにおける探索)を支援するために,ベイズ最適化(Bayesian optimization; BO)を活用したデザイン案生成フレームワークBO as Assistantを提案する.ベイズ最適化は,観測データに基づき効率的なサンプリングを逐次的に行う最適化手法であり,これまでに,designer-in-the-loopなデザイン最適化のフレームワークで効果的に用いられてきた.しかし従来は,システムがサンプリングしたデザイン案をデザイナが評価させられる(明示的なloopを強制される)ワークフローになっていたために,デザイナは主導権を握って自由な探索を行うことができず,行為主体感が失われる問題があった.それに対して我々のBO as Assistantでは,デザイナが自由にスライダを操作してデザインを探索している様子(パラメタ値の組み合わせの探索を行っている様子)をシステムが観測することにより,明示的にデザイナに入力を求めることなく,ベイズ最適化のサンプリング戦略によって効果的なデザイン案を生成できる点が優れている.本稿では提案フレームワークの一般性を示すために,写真の色調補正,プロシージャルモデリング,プロシージャルマテリアル生成の異なるドメインに適用し,デザイナが自由に探索を行うことを阻害することなく合理的なデザイン案が非同期的に生成できる様子を示す.

小山 裕己,後藤 真孝(産総研)
(13) 円形集合体検出後の修正作業における格子線の効果: 木製丸棒部材の在庫画像を用いた検証 (特集号からの招待)

森茂 智彦,山口 穂高,藤巻 吾朗(岐阜県生活技術研究所),生駒 晃大(岐阜県産業技術総合センター)