外国語語彙学習における意味的多様性の高い多義語用例の提示システム (104)

外国語学習においては,多くの語を学習する事が必要になる.外国語の語と母語ではそもそもの使い方が異なるため,単純に語とその母語での翻訳を見せるのではなく,母語話者が実際に語を用いた箇所をテキストから抜き出して「用例」として提示することが重要である.さて,学習者が初期に学ぶ語の多くが,複数の異なる意味を持つ多義語である.意味が複数あり,それぞれよく使われる場合は,多様な用例を提示してくれることが望ましい.しかし,個々の用例の意味を人手で付与することはアノテーションコストの面から非現実的である.また,教育の目的では,意味付与を自動で行い学習者に提示するアプローチも,誤りを含む可能性があるため難しい.そこで,本研究では,用例に対して,意味的多様性を考慮した「主要度」を自動付与する手法を提案する.学習者は,主要度の高い順に用例を学ぶだけで,その語の多様な意味を学ぶことができる.提案手法は教師データを必要としないため,様々なドメインや言語に適用できる利点がある.まず,事前学習済言語モデルと転移学習の考え方を用いることで,語の出現(用例)ごとの意味を捉える文脈化単語埋め込みベクトル集合を語ごとに作成する.次に,各用例の文脈化単語埋め込みベクトルが外れ値である度合い(異常度)を計算する事で,各用例がどの程度重要な用例かを計算する.実際に日本語を母語とする英語学習者に対して,英語母語話者により妥当性が確認された多義語の語彙テストを行うことで知る限り初めて第二言語学習者の多義語の語彙知識に関する公開データセットを作成した.評価の結果,有望な結果を得た.

江原 遥(東京学芸大)
初心者のためのホロウマスク効果のある3DCGモデルを利用したキャラクタの目の描画支援 (204)

本研究では,主観視点の構図を描画する初心者を対象に,視聴者の視線と一致するキャラクタの目の描画について支援し,初心者でも主観視点の構図を正しく描画することができるようにすることを目指す.本稿では,初心者と上級者が正面・上下左右・斜め方向の9方向の構図で目を描画する実験を通して,目の描画技能の違いについて説明する.そのために,主観視点の構図の視線として被験者らが描画したキャラクタの目が適切であるかを評価する.その結果,上級者は全ての構図で適切な視線を持つ目を描くことができていた.一方で,初心者は左右の目で異なる方向を見るなど適切な目を描画することが困難であることを確認した.以上の結果を踏まえ,初心者でも適切な目を描画することができる支援システムの提案をする.本システムはキャラクタが常に主観視点の構図で視聴者を見るホロウマスク錯視を利用することで,構図に対し適切な視線を持つ目を提示する.これにより,初心者でも構図に対し適切な視線を持つ目を描くこと期待する.

飛鳥 惇,東 孝文(東京電機大)
仮想空間上での咳動作がもたらす対人距離への影響 (174)

人間関係を構築・維持していく上で,コミュニケーションは必要不可欠であり,その際の距離感は重要な要素である.これまでにも,物理空間での対人距離の測定,その際の印象の変化などの検証が行われてきた.一方で,2020年の新型コロナウイルス蔓延をきっかけに,私たちの生活様式は大きく変化し,特定の意識・価値観や行動様式は変化したまま元には戻らないだろうとも言われている.そこで本研究では,コロナ禍を経験した上での対人距離・咳動作がもたらす影響に着目し,咳をしない場合の,咳をする場合の,2種類の対人距離に関して仮想空間上で調査を行った.本研究の結果,物理空間を共有しない仮想空間上であったとしても,実害の有無は関係なく,咳動作によって印象が低下し,対人距離が大きくなったことが明らかになった.

久保田 侑(ATR/同志社大学),木本 充彦(ATR/慶応義塾大学),飯尾 尊優(ATR/同志社大学/JSTさきがけ),下原 勝憲(ATR/同志社大学),塩見 昌裕(ATR)
和食体験中の視線行動を用いた文化的関心の推定 (105)

人の潜在的な興味や知識は,その人の無意識の行動に現れることが多い.本研究では,料亭での和食体験中の会話,ふるまい,視線行動から和食文化に関する人の興味を推定することを試みる.分析に使用する記録データは,和食文化の体験分析を目的として収録された料亭での共食体験を記録したデータを使用し,分析を行った.記録したデータはデータ収録参加者一人一人の視線データと音声データ,データ収録場所である料亭の店内に設置した定点カメラを使用した.各自の視線データの中から対象となる視線量やその時間と,文化的関心の高さの指標を測るアンケートの2つのデータから相関関係を分析し,文化に対する興味や知識量が,視線行動からどの程度推定できるのかを議論する.

永井 彬博,角 康之(はこだて未来大),山下 直美(NTT),井村 直恵(京産大)
電動車椅子とHMDを用いた段差通過シミュレータの基礎検討 (082)

車椅子に不慣れな人が車椅子に乗る感覚を事前に訓練できるように,Virtual Reality(以降VR)を用いた車椅子シミュレータが数多く開発されてきた.しかしVRを用いた従来の車椅子シミュレータは,金銭的なコストと現実感がトレードオフの関係にあり,高い現実感を実現するためにはモーションプラットフォームなどの大型な設備を常設する必要があった.我々はこの問題を解決するために,市販電動車椅子の低自由度動作をVection誘発映像で補完する車椅子シミュレータを提案し,上り坂・下り坂を通過するシミュレーションを実現してきた.本稿では,坂と同程度以上の頻度で市街地に存在する段差に着目し,段差を通過するシミュレーションの実現方法の基礎検討を行う.

板床 海斗,本岡 宏將,大河原 巧,杉本 隆星,宮田 章裕(日大)
表情認識技術を用いた役者支援システムの開発 (073)

新型コロナウイルス感染症の影響で演劇においても,インターネットのライブ配信を用いた無観客公演が行われている.本研究では,演劇の無観客公演において,表情認識技術を用いて観客の表情を解析し,解析結果を笑い声のような感情を表す音に変換することで,観客の反応を役者に伝えることができるシステム「リアクションメーカー」を開発した.観客と役者が離れた場所にいたとしても,インターネットで接続されたPCにより,劇を演じている役者に観客の反応をリアルタイムに伝えることができる.このシステムの有効性を測るために,過去に一度以上観客の前で演技をしたことのある役者3名を対象に実証実験を行った.実験の結果,リアクションメーカーは,一般の無観客公演に比べて,役者の動機に影響を与える可能性があることが分かった.

南谷 有祇,土方 嘉徳(関西学院大)
MonoBocai:モノボケを活用した発散的思考技法の提案 (092)

創造性の高いアイデア発想をするためには,テーマに関連しつつ認知外の意外な情報を収集することが重要であるとされる.本研究では,既存のモノを対象として,その新しい使い方に関するアイデアを創造するための新しい発想技法であるMonoBocaiを提案する.従来から,既存のモノの普通ではない使い方を発想することによるアイデア生成はしばしば行われている.しかしながら,そのような発想を行う際に,どうしても有用性のあるアイデアを生成しようとする意識が働き,発想の飛躍がなかなか生じない.そこで,モノが持つ隠れたアフォーダンスをあぶりだすための手段として,お笑いジャンルの1つである「モノボケ」を活用することを試みる.本稿では,提案する発想技法について説明し,その有効性を検証するために実施した予備的な実験とその結果について述べる.

竹内 慎吾,高島 健太郎,西本 一志(北陸先端大)
オンラインイベントにおけるインタラクションの実装と考察 (221)

本研究では,様々な形態のインタラクティヴなオンラインイベントを行い,考察することでオンラインイベントにおけるインタラクション手法について検討することを目的とする.舞台の演者と観客,およびストリーミング視聴者が相互にインタラクションを行う劇を行い,演劇においては演者の即興性,観客の行動の自由度が重要であると考察した.また,VR空間におけるインタラクションにおいては,狭い範囲のものと,広範囲に及ぶものをそれぞれ可能にすることで,広く楽しめるコンテンツになることが分かった.

千田 竜也,児玉 幸子(電通大)
精肉商品の好みを定量化する手法の提案 (173)

食肉は多くの日本人に好まれている.精肉商品を購入する際の選定基準の上位に鮮度の良さがあり,一般的に色味やドリップ,ウィープの有無で判断される.また,精肉商品には色味の他に,脂身の量や入り方といった個体差があるため,人それぞれ好みが分かれ,精肉商品を選定する際の判断基準となっている.しかし,精肉商品の色味や脂身の量,入り方には,明確な指標が定められていないため,好みの共有は難しい.そこで本研究では,精肉商品の好みを定量化した指標を策定するために,その指標を精肉商品の色味と,脂身量と入り方と定め,脂身量の取得と,色味の分類を色特徴(HSV)に基づいて,SVMで検証した.分類精度は特徴量1の平均が54%,特徴量2の平均が51%と分類精度の向上が必要な結果となった.今後は,CNN等の別の分類器の手法の検討と,脂身の入り方の識別手法の実装,策定した精肉商品の選定指標で,好みを考慮した商品選定が出来るかといった評価実験を行う.

相山 未来,丸山 一貴(明星大)