AroNap:香りにおける仮眠支援システムの提案と評価 (135)

日本人の睡眠時間は非常に短く,睡眠不足に起因する日中の眠気により作業効率が低下している人も多い.その対策として仮眠が推奨されているものの,仮眠習慣を持つ日本人は少ない.本研究では,短時間で効果がある仮眠を支援するウェアラブル入眠・起床促進システム「AroNap(アロナップ)」を開発し,その効果を検証した.AroNapは,コンピュータ制御可能な香り提示デバイスをネックピローに装着することで,仮眠時の入眠及び起床を適切なタイミングで促すシステムである.評価実験では,AroNapの有無と香りの提示タイミングによる脈拍間隔,OSA睡眠調査票の結果の比較を行い分析し,システムの妥当性をSUSを用いて分析した.実験結果より,AroNapを正しく使用した場合,脈拍間隔では標準偏差の値が小さくなり,OSA睡眠調査票では標準化得点が向上し,睡眠の質が改善されたことが明らかになった.

飯塚 万葉,横窪 安奈,ロペズ ギヨーム(青山学院大)
手に取って嗅ぎ分けることに重点をおいたタンジブル嗅覚ディスプレイの研究 (177)

日常生活でハグやキスをする時に認識するパートナーの香水の香りは,空気中を漂う同様の香りを受動的に嗅ぐよりも魅力的に感じるものだ.このように,香りは能動的に嗅ぐ動作が伴うことで異なる体験に変わると考える.本研究は「香りがする物を手に取って各部位を嗅ぐ」という人間の本能的な嗅ぐ動作に着目し,日常生活では嗅ぐことのない物と触れ合う要素を取り入れた新しい嗅覚ディスプレイの実現を目指す.本論文では,動作を取り入れた嗅覚提示を行うことで拡張できるアプリケーション例やプロトタイプについて示す.

岸田 和大,佐藤 俊樹(北陸先端大)
二者間の動作模倣を計測可能なデジタル玩具の開発 (065)

近年,児童虐待の相談対応件数が急増しており,子どものこころや行動の問題,育児に悩む親が増えている.こうした親子に対して,玩具遊びを介して親子の相互交流の質を高めることで回復へと働きかける遊戯療法および行動科学に基づいた心理療法として,親子総合交流療法(PCIT;Parent-Child Interaction Therapy)が実施されている.PCITにおける親の子育てスキルの評価指標として,親子間の動作模倣の頻度が挙げられるが,親子の玩具操作を同時に観察し,動作模倣の有無や程度を判断する必要があるため,その評価が難しいことが課題となっている.本研究では,玩具の操作を計測可能なデジタル玩具2種(センサ付きブロック,お絵描きアプリ)を開発し,デジタル玩具を用いた親子間の動作模倣の可視化を検討した.その結果,開発したデジタル玩具2種それぞれにおいて,デジタル玩具の操作データから二者間の動作模倣を確認できた.これらの結果から,開発したデジタル玩具により,玩具を介した二者間の動作模倣を可視化できる可能性を確認できた.

沼田 崇志,木口 雅史,松本 久功,牧 敦(日立製作所),川崎 雅子,加茂 登志子(日本PCIT研修センター)
Filter Bubble Cam:フィルターバブルを体感するためのカメラフィルター (172)

推薦アルゴリズムやSNSの利便性に潜むフィルターバブル問題を自分事として捉えることは難しい.本稿ではこの解決のため,ユーザが情報推薦アルゴリズムの影響を物理空間で疑似体験するカメラフィルターFilter Bubble Camを作成した.Filter Bubble Camはユーザの嗜好情報を得ることで,ユーザの好むものだけが写真に写るよう,画像処理によって撮影した写真からユーザの嗜好に合わないものを削除する.Filter Bubble Camの体験によって,ユーザがフィルターバブルにより提示される情報の偏りを把握し,情報推薦アルゴリズムによるデメリットを体感的に学ぶことを狙う.

稲垣 桃,山本 祐輔(静岡大)
VRコントローラを用いた 寝ながら快適に文字入力が行える手法の提案 (161)

VRコンテンツが普及するにつれ,VR空間に長時間滞在するヘビーユーザーも増えてきている.その中で,楽な姿勢でVRコンテンツを楽しみたいと考え,座った姿勢や寝た姿勢でVRHMDを使用したいという要求も高まっている.VRコンテンツでは文字入力を行う機会があるが,既存の文字入力手法は寝ながらの使用を想定していない.そのため,本稿では寝た姿勢でも快適に使用できる文字入力手法として,2つのコントローラのスティック入力を用いた文字入力手法を提案する.さらに,既存手法と提案手法について寝ながらを含む3つの姿勢で評価を行った.結果として,提案手法は性能や使用時の快適さが優れているとは言えなかった.しかし実験を通して,寝ながら文字入力を行うにあたっての既存手法の性能や問題,性質などについての知見を得ることができた.

阿部 広河,真鍋 宏幸(芝浦工大)
ハンガー反射を用いて遠隔者の頭部回旋感覚を体感する研究 (075)

遠隔共同作業は,遠隔でのコミュニケーションにおいては遠隔ユーザの方向の情報を把握するのが難しいため,遠隔ユーザの視線を共有することによってコミュニケーションを向上させることができ,共同での遠隔作業の効率を上げられると考えられる.視線共有の手法について,音声,文字や画像,振動で相手へ方向提示を行う研究があるが,方向情報のみ相手に伝達するものに過ぎず,相手の回旋方向をコントロールするのではない.本研究は遠隔ユーザの回旋情報を角速度センサーで取得して通信し,ハンガー反射現象を用いて,遠隔ユーザの回旋感覚を無意識的に体感できるシステムを提案する.実験の結果,ハンガー反射を用いて遠隔ユーザの回旋感覚を体感可能なことが確認でき,テレプレゼンスの利用者のコミュニケーションを向上させることを期待できる.

李 万慧(東大),平城 裕隆(東大/産総研),中村 拓人(東工大/日本学術振興会),暦本 純一(東大/ソニーCSL)
装着型温度刺激の組み合わせが接触物体の温度知覚に与える影響の分析 (203)

温度感覚は近傍の刺激に影響を受けやすく,Thermal Grill IllusionやThermal Referralといった顕著な錯覚現象が発見されている.これらの錯覚現象では温度刺激の近傍に別の刺激がある場合,温度やその知覚位置が従来とは異なる知覚になる.特に手指では近傍に別の刺激がある場合が多く,指先で触れて物体の情報を得る場合でも近傍に異なる刺激が提示される場面もある.そこで,本稿では指先で物体に接触した際,複数の装着型温度提示装置による近傍への温度刺激が接触物体の温度知覚に与える影響を分析した.実験では接触箇所の近傍2か所に温・冷覚刺激を組み合わせて提示した場合,接触物体の温度知覚を錯覚する条件があった.

橋口 哲志(龍谷大)
頭部搭載プロジェクタによる軽量広視野ウェアラブルARシステム (159)

本論文では,ユーザが頭部にプロジェクタと単眼カメラを搭載することで,ユーザの視線の先に情報を提示することが可能で,実空間の平面に情報を重畳表示することができる軽量広視野ウェアラブルARシステムを提案する.提案するシステムでは,カメラによるSLAMを用いて頭部の位置姿勢の推定を行い,ユーザの見ている場所によって映像を変化させることにより,疑似的な大画面を可能にする.またSLAMから得られた点群情報による平面検出を行い,実空間の平面に仮想物体の配置することでAR重畳表示が可能になる.眼鏡にプロジェクタとカメラを固定した試作システムを開発し,検出した平面に仮想物体を配置することで,AR重畳表示が可能であることを確認した.また仮想物体を異なる位置から観察することで,運動視差による立体視を確認した.

湯田 遥季,飯盛 正慶,小室 孝(埼玉大)
様々な形状の全周囲ディスプレイを実現可能な提灯型構造体の変形についての考察 (220)

提灯は輪状に組んだ竹ひごを多数組み合わせて作られ,上から押すことで折り畳むことができる伝統的な照明器具である.今回我々は提灯の骨格部分を押しながら形状変化させることで様々な形状を一つの提灯のみで実現できる事に着目した.そしてこれらの形状変化の中に球体/ドーム形状などの特徴的な形状が存在することや,形状変化をシームレスに行うことができることもある.我々はこの提灯型構造を形状変化が可能な新たな全周囲ディスプレイへ応用できないかと考えた.本論文では,これらのディスプレイの形状についての考察を述べる.

栗田 侑弥,石井 万里(電通大),中村 俊勝,佐藤 俊樹(北陸先端大)