Spot Shadow: 影の操作を可能にするシステムの提案 (115)

照明環境のデザインは,室内の仕様を定める上で重要である.これまでに,照明の向きや光量をコンピュータで制御することにより,室内の指定された場所を明るく照らすことができるシステムが提案されてきたが,このような「光」を制御する方法では,明るく照らす領域の大きさや位置を指定することは容易であっても,暗くする領域を同じくらいの自由度で指定することは困難である.そこで本研究では「影」を制御することに着目し,暗い領域を制御できる手法を提案する.本稿では,ユーザが指定した位置に任意の大きさで影を生成できるシステム“Spot Shadow”の構築について報告する.

阪口 紗季(東京都立大)
HoloLens 2を用いた動物外科手術支援ARシステムの試作 (078)

本稿では,獣医師による動物の外科手術を支援するARシステムを提案する.獣医師は外科手術の際,CT検査を行うことで,動物の骨格や内臓等の状態を確認し,手術方法を検討することがよくある.本研究では,HoloLens 2を用いることで,術者の視界の中でCT検査の結果を3次元的に確認することのできるARシステムを開発した.CT検査から得られた患者動物の骨格や内臓等の構造は3DオブジェクトとしてHoloLens 2上に表示され,動物の体内が透けて見えているかのような状態を作り出す.これによりユーザは手術方法検討の際に3次元的に患部を確認することが可能となる.3Dオブジェクト操作は,ハンドジェスチャで操作可能なメニューを設置することで行う.2名の獣医師に本システムを体験していただいたところ,全ての獣医師から,PC上でCT画像を確認するという従来の方法よりも使い勝手が良いという意見をいただいた.

嶋田 真美子,栗原 一貴(津田塾大),辻井 孝明(りんく動物病院)
VibeShare::Maptop―写真撮影・同時参加型バーチャル旅行システムの開発と評価 (051)

COVID-19以降,物理的な移動が制限される環境が続いており,将来の旅行のための情報収集を目的としたオンライン旅行の需要が高まっている.参加者は事前に旅行先の場所について多少の知識や興味を抱いている状態が想定され,体験後にその知識や興味関心がどれほど深まったか,がオンライン旅行の効果として重要な要素になる.しかし旅行中参加者が何に興味を持ったのか,知識や興味関心が引き出されたか,について定量的に評価する方法は限られており,シナリオの改善に十分な判断材料がない場合が多い.これは現実での旅行についても同様のことが言える.我々はこの課題に対して「バーチャル旅行での行動ログから,参加者の理解や興味関心を定量的に評価できる」と仮説を立て,(1)複数人で同時参加が可能で,(2)旅行先で写真を撮ることができ,(3)旅先を自由に動き回れる,バーチャル旅行システムVibeShare::Maptopを開発した.ワークショップ形式の実験を通して,参加者の行動を評価し,システムの有効性やシナリオの評価,参加者の行動特性を可視化することに成功した.

山崎 勇祐,白井 暁彦(REALITY株式会社)
精神科デイケアにおける考え方の整理を支援するロボットの開発に向けた印象調査 (116)

社会的なコミュニケーションロボットの重要な役割の一つは,人との対話によって人のメンタルヘルスの支援を行うことである.本研究では,精神科デイケアにおいてプログラムの一環として取り入れられている考え方の整理を支援する「コラム法」により,患者が柔軟な考え方や自身の特性を理解することに着目した.本研究では音声対話によって考え方の整理を支援するロボットの開発に向け,コラム法に基づいたロボットの対話内容を設計し,自律的な音声対話機能を実装した.本論文では,実際の精神科デイケアにおいて本プロトタイプシステムの有効性を評価し改善するために行った予備実験について報告する.

秋吉 拓斗(ATR/奈良先端科学技術大学院大学),住岡 英信(ATR),熊崎 博一(NCNP),中西 惇也(阪大),塩見 昌裕(ATR),加藤 博一(奈良先端大)
客層情報を反映するひと型CGオブジェクトを用いたARによる店舗の賑わい提示手法 (108)

見知らぬ店舗に訪問する際に他の訪問客が少ないと寂しく感じられ,訪問を躊躇してしまうことがある.本稿では,初めて訪問する店舗に対するこのような心理的な入店のしづらさを払拭することを目的として,訪問客の携帯端末のカメラで取得される店舗映像に対してCGのひと型オブジェクトを重畳することで,その店舗を過去に訪問した訪問客の情報(人数や客層)を伝えるARアプリケーションを提案する.提案アプリケーションの有効性を統制された環境の下で検討するため,VR空間内で仮想的なタブレット端末を操作することで本アプリケーションを体験できる実験用システムを開発した.実験結果として,店舗映像に対してCGのひと型オブジェクトを動きや客層情報を伴う形で重畳することが,店舗への心理的な訪問のしやすさや訪問意欲の向上に寄与することが示された.

大津 耕陽,上野 拓也,泉 朋子(立命館大)
円偏光方式の立体ディスプレイを用いた鏡に実像と異なる鏡像を表示する手法の提案 (195)

鏡に映る映像と実像とで異なる像を提示することで驚きを演出する方法は数多く提案されている.本研究では円偏光フィルタを貼り付けた鏡と三次元ディスプレイを用いることで,実物のディスプレイ上と鏡像のディスプレイ上で異なるものを表示させる手法を提案した.そして鏡像は白黒画像,実像はカラー画像を提示するもの,鏡像では潜像,実像では顕像を提示するものの2つを実装しその有効性を検討した.結果,視野角や提示映像の制約はあるものの,鏡像と実像で異なるものを提示出来た.

野口 拓馬,武井 亮,日暮 拓海,福地 健太郎(明治大)
可変抵抗に操作感を付与するためのインタラクティブな機構モデリング支援ツール (181)

低価格帯3Dプリンタの普及により,個人レベルでも様々な機構部品を設計/出力することが可能になった.しかし,一般に部品設計には専門的なアプリケーションを使いこなす必要があり,習得には多大な時間と労力が掛かる.本研究では,先行研究として提案した「可変抵抗に操作感を付与する外骨格機構」に焦点を当てた,インタラクティブな機構モデリング支援ツールを作成する.


山本 侑吾,塚田 浩二(はこだて未来大)
花の開花の動きをメタファーとした人の気配伝達装置の基礎検討 (226)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によりオンライン化が一気に加速し,遠隔会議システムなどを用いたコミュニケーションが増えている.遠隔会議システムを用いた情報伝達方法は効率的ではあるが,普段の生活でさりげなく感じられる気配まで伝えることは難しい.気配は,特に集団活動の際に互いの活動の様子や雰囲気を把握するための重要な要素であると考えられる.本研究では,遠隔地にいる人々の気配を伝達する装置の開発を目的とし,その表現手法として花の開花の動きに着目した.本稿ではその基礎検討として,オンラインでの気配の欠落による問題の調査,気配を感じ取る要素の調査,レトリック手法に基づく花の動きと気配の関連性について調査を行い,花の動きで遠隔地にいる集団の気配を伝えられる可能性について調べた結果を報告する.また,空気で動くパウチモーターを使用し,最適な花の形状や開花の動きを実装・検討した.

加藤 海木子,SEONG YOUNG AH,佐藤 康三(法政大)
ユマニチュードによる立ち上がり動作介助の理解に向けた接触・近接インタラクション計測システムの開発 (120)

ユマニチュードに基づく認知症ケアにおいて,立たせる技術は重要な要素である.被介護者を立たせる際,通常の介護では腰や腕を掴み,上に引っ張るが,ユマニチュードでは,介護者と被介護者の胸を密着させ,両者の足を結ぶ多角形内に重心を移動させて,立ち上がりを介助する.この際,立ち上がるに従い胸や腹間の距離が近づくように引き上げるのがコツであり,体の密着度や距離を計測することで正しい動作かを評価できる.しかし,両者の距離が近いためオクルージョンが発生しやすく,既存の画像による姿勢推定では,これらの情報を計測することが困難であった.そこで本研究では,ユマニチュードの技術に基づく立ち上がり介助動作訓練システムの実現を目指し,簡単に装着できる服型の近接・接触センサを開発した.これにより,立ち上がり動作を介助する際の介護者と被介護者両者の体の密着度や距離の計測が可能となる.本提案システムは,動作の良し悪しを実時間で評価し,学習者へ提示することを可能にするため,習得が難しいといわれるユマニチュードの訓練支援システムの実現につながる.

住岡 英信(ATR),安 琪,倉爪 亮(九大),塩見 昌裕(ATR)
音源分離技術を用いた、観客からのリクエスト楽曲を即興でリミックスするシステムの制作 (058)

本研究は,音楽ストリーミングサービスを通して,オンラインライブなどの観客(オーディエンス)からリクエストされた楽曲に対し,ループ音源抽出アルゴリズムを使用,そこから周期性のある8拍のループ音源を作成.作成されたループ音源に対し,深層学習による音源分離モデルを使用する.そこで分離した4つの楽器(Bass,Drum,Vocal,Other)ごとの音源から,さらにループ音源を作成するシステムの制作を行った.これにより,オーディエンスそれぞれからリクエストした複数楽曲を即興で編集,重ね合わせて再生(リミックス)することが可能になった.

小原 開,長谷川 遼,西門 亮,髙梨 大,徳井 直生(慶大)
VisualHapticsを用いた受動操作における擬似触覚生起の検証 (201)

立体感や奥行き感,質感などで擬似触覚を提示するシステム「VisualHaptics」がある.我々は様々な条件でVisualHapticsを体験しているときに,自分が操作していなくてもカーソルと自分の手の動きが一致していれば,擬似触覚を感じることを発見した.そこで本研究では,能動的にマウスを操作する条件と受動的に手が動かされる条件でVisualHapticsを体験し,それらの体験の違いを調べる.本稿では,能動操作の擬似触覚と受動操作の擬似触覚の違いを調べた簡易的な実験の内容と結果についてまとめる.

松本 英資,安中 勇貴,山岸 丈留,相澤 裕貴,渡邊 恵太(明治大)
ヘッドマウントディスプレイにおける指文字を用いた文字入力手法の提案 (099)

ヘッドマウントディスプレイの普及において,文字入力手法が課題である.指先などでカーソルを操作し仮想キーボードを操作する手法が主流であるものの,手の認識に深度センサや複数台のRGBカメラが必要である.そこで本研究では,MediaPipe Handsを用いることによりRGBカメラ1台で手の形状を推論し,手話の一種である指文字によって文字を入力するシステムを提案する.本稿ではアメリカ手話(ASL)の指文字に対応するプロトタイプを実装し,問題点や実用性を洗い出し,本システムの有用性について検討した.

久保田 千尋,湯村 翼(北海道情報大)
操作の前提条件を自然な形で確認するインタフェース (149)

機器を操作する際,操作の前提条件が整っているかどうかを確認することは,安心感に大きく貢献する.本稿では,前提条件を確認するインタフェースがどのようにデザインされるべきかを検討し,実際にプロトタイプを試作した.ひとつは,赤外線リモコンのボタンを押して操作を行う前に,リモコンの位置や角度が適切かどうかを確認するためのインタフェースである.もうひとつは,音声ナビゲーションの際に電子コンパスが狂っていないかどうかを確認するためのインタフェースである.

彭 雪儿,宮下 芳明(明治大)
ゴースト表示による仮想テニストレーニング支援システムを用いた長期実験結果の報告 (198)

バーチャルリアリティ(VR)を用いた仮想空間内でのスポーツトレーニング支援は活発に研究され,実用例の報告も増えている.我々はこれまでにテニスにおけるボールの打ち返し練習を題材にラケットとボールが衝突した際のラケットの位置姿勢をゴーストとして表示することでスイングの修正用フィードバックを視覚的に与えるシステムを開発した.同手法は短時間でフィードバックを得られるため,単位時間あたりの練習量を増やすことができるという利点がある.これまでの調査では30分弱の時間内での成績向上を測定してきたが顕著な差は見いだせていなかった.今回,本報告の主著者1名が45日間に渡った実験を行った結果,ゴースト表示を切った後も効果が持続することが示唆された.また現時点では提案システムの長期使用に伴う特別な不快感などは見られず,提案システムを利用しての長期間の評価実験に大きな支障は見られないことが分かった.

滝澤 翔,石本 岳,福地 健太郎(明治大)
孤独感軽減のための顔の傾きによる気配創出デバイスの開発 (160)

新型コロナウイルスの感染拡大により,人々は外出自粛を強いられ,学校の友達や職場の同僚と会う機会が減少した.人と会えないことや人の監視下から外れることによる孤独感や意欲低下がみられ,それが深刻化し,コロナ鬱を発症させる人もいる.本研究では,「気配」に着目し,相手の気配を無意識的に受けとることで1人きりでの作業における孤独感を軽減することを目的としたシステムを提案する.そこで我々は,遠隔地で気配を創出するために,顔の傾きを伝達するデバイスを開発した.

米田 優香,堀之内 寛太,古田 ゆい,栗原 渉,有山 大地,韓 旭,串山 久美子(東京都立大)
人工大理石透過型LEDタッチディスプレイのソフトウェアライブラリ開発 (186)

キッチンのワークトップなどに使われる人工大理石には光を透過する性質があり,その背面にLEDマトリクスディスプレイを配置することでワークトップ表面をディスプレイ化する研究に取り組んでいる.そして,そのLEDマトリクスパネル中のLEDの幾つかを赤外線LEDとフォトトランジスタを置き換えることで,赤外線反射によるタッチや物体のセンシング機能を持たせている.本研究は,この人工大理石透過型LEDタッチディスプレイの研究において,LEDマトリクスパネルのサイズや配置を抽象化するほか,画面表示APIやセンシング機能APIの提供などアプリケーション開発のためのライブラリ開発を行っている.

中植 義斗,平井 重行(京産大)
都市定点カメラを利用した人流データの可視化 (131)

現在,Covid19の感染拡大による社会情勢の変化から,主要都市部の繁華街における人流の増減が注目されている.これらのデータは,スマートフォンの位置情報やセンサ情報の蓄積から解析されているが,そのデータは高額であり利用範囲は限られている.そこで本研究では,都市のオープンデータとして,YouTubeでリアルタイム配信されている定点カメラの映像を利用し,OpenCVによって人の流れを解析し,その都市の混雑情報をリアルタイムに3次元仮想都市モデルに反映し可視化する.

松井 祐希,川合 康央(文教大)
Bending Desktop:物を載せると凹む机 (224)

本稿では,机上にプロジェクションしたタイル模様が,置いた物によってあたかも凹んでいるように見える様子を,タイル模様を変形させることで実現するシステムを紹介する.物の検出を自動的に行うことで静止している物だけでなく,動く物にも適用できる.我々は,周囲のさまざまなモノや環境が情報環境になり得る近い将来に向け,アンビエント・インタラクションの可能性を検討するなかで,こうした錯視的な人間特性を利用した環境の可能性に興味を持って検討を進めている.

竹中 雄亮,外村 佳伸(龍谷大)
インタラクティブな解軌道観察の可能な教育用慣性ロータ型倒立振子実験教材 (112)

本稿では,現代制御理論の学習支援を目的とし,状態空間における解軌道を実働状態でグラフィカルかつインタラクティブに観察できる慣性ロータ型倒立振子実験教材の提案と実装について述べる.慣性ロータはロボットや人工衛星等の姿勢制御にも用いられ実用性が高く,その倒立動作も視覚的な面白さを持っているため,現代制御理論を学ぶ教材として優れている.本教材は倒立振子と制御用ボード,および実働状態で制御パラメータ変更や状態空間の解軌道を観察できるホストPC側のアプリケーションからなる.本教材により,学習者は振子の実働状態でインタラクティブにパラメータ変更や解軌道の観察が行え,現代制御理論の理解を深めることができる.また小型・安価な部品で構成されているため,多人数の実験授業においても学習者個々人に配備し易い.

古川 誉大,山本 欧(東京電機大)
言葉とポーズが一致した際に反応する開閉インタフェースの開発 (132)

自動ドアが普及されていることにより私たちの生活水準は高まっており,生活が豊かになっている.自動ドアを設置することにより室内環境が保たれている.しかし,自動ドアが多く開閉するとそのメリットが薄れてしまう.そのため,誤認識によって自動ドアが反応する無駄な開閉を減らしたいと考えた,そのため私は発話とポーズが一致した場合にのみ反応する開閉インタフェースの開発を行った.


寺島 樹,川合 康央(文教大)
デジタルカメン:組込型光センサアレイを用いた近接表情認識機能をもつデジタルマスクの設計と実装 (017)

本論文では,実空間での対面コミュニケーションを支援するために,ユーザの顔の表情全体をアバタの表情に反映させることができる薄型のデジタルフルフェイスマスクディスプレイ「デジタルカメン」の設計と実装について述べる.カメラを用いた表情認識技術により,アバタによる顔の拡張が可能になったが,その応用は仮想空間での対面コミュニケーションに限られていた.本研究では,実空間でのアバタによる顔の拡張を可能にするために,軽量でフレキシブルなディスプレイと表情認識器を統合したデジタルカメンを提案する.顔全体に分散した40個の光センサから構成される光センサアレイを用いて表情を推定するため,カメラによる表情認識と異なり近接で表情認識できる.機械学習アルゴリズムの1つであるSVM (Support Vector Machine)を用いた10クラスの表情認識モデルを構築する.提案する表情認識モデルの平均正答率は79\%であった.被験者にデジタルカメンを装着してもらい,鏡越しにデジタルカメン上に表示されるアバタを見てもらった.装着者自身の表情に同期して変化するアバタの表情変化は,アバタ再現性やアバタの表情変化の応答性という評価指標において,カメラベースの表情認識およびその結果を表情付アバタとして生成および表示する機能をもつ従来手法(e2-Mask)と比較して同程度の結果が得られた.

竹川 佳成(はこだて未来大),徳田 雄嵩(City University of Hong Kong),梅澤 章乃(はこだて未来大),鈴木 克洋,杉浦 裕太,正井 克俊,杉本 麻樹(慶大),Diego Plasencia,Subramanian Sriram(University College London),平田 圭二(はこだて未来大)